たまや
Tamaya

2013

performance / installation

Water / Soap / Dry Ice / PC Fan / LED / PVC Tube / PVC Hemisphere 

50x50x50cm

17世紀にポルトガルから日本へ伝えられたとされるシャボン玉。虹色に光りながら風に吹かれ、空へと儚く消えゆくその現象は、時代を問わず人々の心を魅了してきた。江戸の街にはシャボン玉を売る香具師(やし)が現れ、好奇心旺盛な子供たちが夢中になってその後を追う。玉屋はシャボン玉を作る液体を入れた容器と細い竹や葦など筒状の吹き具を携帯し、売り声を発しながら市中を流していた。人気を博した玉屋は、粋な風俗舞踊として仕立てられ、1832年に「おどけ俄煮珠取(おどけにわかしゃぼんのたまとり)」として江戸中村座で初演される。

物語の構成を分析すると、啖呵売の口上から始まり、「たま」という言葉で連想される玉づくしで軽妙な雰囲気を作り出す。蝶々のおもちゃ売が登場した後、場面は夜の遊郭路上へと移り、辻行燈に身を隠しながら、恋心を抱く花魁の姿を待ち望むシャボン売の情動が描かれる。口説き話から、当時の流行歌がいくつか含まれるおどけ節へと転じ、最後は祭りの囃子で幕を閉じる。

風、川の流れ、月光、闇の中の存在、物体の落下など、物語で描かれている事象を題材として設定し、触れたくても叶わない香具師の情動など、当時は実現しえなかった現象・経験の思索を試みた。それは暗闇の中で青色に淡く灯り、丸いモノの内部はうごめく霧でよく見えない。球体から伸びる筒状の管からは気化したドライアイスが溢れだし、シャボン膜を球体へと膨らませる。膜が内包する気体は空気よりも重いため、シャボン玉が飛び去ることはなく、重力によって落下する。見物人は、手のひらで僅かに限られた時間その脆さに触れる。繊細な膜が破れると冷たい気が手の上から零れ、消え去った実体の感触のみが心に残る。