空のピストルケース 
Empty Pistol Case

2012

Site-specific performance/installation

Wood / Brass 

62 x 32 x 23 cm (x2)

Site specific installation projects, Soane’s 6 suitcases
@ Pitzhanger Manor Gallery. London

ロンドン中心部に位置するイギリス人建築家ジョン・ソーン卿(1758-1837)の自邸兼スタジオであった博物館には、彼自身が生涯をかけて収集したオブジェがいたるところに展示されている。エジプト王の石棺、ポンペイ遺跡の模型、ギリシャ・ローマ建築の断片など、収集されたオブジェから伝わるソーン卿の好奇心に圧倒される。博物館の一室の壁に木とガラスで作られた横長の陳列箱がある。蝶番で開閉し、中身が空っぽのケースには、1969年に盗難に遭うまではピストルが収蔵されていた。

イタリアへの長期旅行を経た後、建築家としての地位を確立したソーン卿は、ロンドン西部に家族のための別邸(Pitzhanger Manor)を構え、時にスタジオまでの約15kmの道のりを歩いていたと伝えられている。博物館に展示されている多数の収集品は当時別邸に存在し、書斎として使われていた左右対称で幾何学的な空間は「がらんどう」な状態であった。

中身がその場から持ち去られ、入れものだけが残されている状態。そこへ一時的に命を運び込むことはできるだろうか。旅行者が荷ほどきをするにつれ、空間に軌跡が展開され、再度しまい込むような過程。二者がケースに入れられたピストルを持ち寄り、劇的な瞬間までを儀式として執り行うような一連の作法。それらが展開した後に、そこは再び空になる。

折りたたまれた二つのケースは、二人の実演者によりそれぞれ持ち込まれ、別邸書斎の中心部に設置される。静寂の中、一方が先に展開しすぎることのないように、各々が相手の所作に目をやり、気使いながら入れもの自体を展開させていく。一つ一つの段階は行動の痕跡として、空間を構成する要素へと変遷する。内在する部位は慎重に平面へとひろげられ、両者が距離をとって向き合う状態に達する。そこに明確な勝敗はないが、観衆は実演者の所作・息づかい・手の震えなどから、定められたシステムの中で二つの命が対峙し、呼応し合う様をその場所で経験する。一時的な出来事は目撃者の記憶に残され、また新たな「がらんどう」な状態が存在する。時の流れの中で、空を問う作品。

Study on movements with a body and objects.